「優駿」オセアニア情報





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優駿 2004年12月号




コックスプレートは3歳馬サヴァビールが優勝
その後ダービーに進むも距離適性の差で2着に

久しぶりに3歳馬が今年のコックスプレートステイクスで優勝した。これは、1995年のオクタゴナル以来のことである。オーストラリアで最も重要な馬齢重量戦だけに、例年のことではあるが、今年もまたコックスプレートは話題がいっぱいだった。昨年のVRCダービー馬で今年のコーフィールドカップの優勝馬エルヴストローム、一時はジャパンカップにと騒がれたグランドアーミー、ファーラップの再来かと騒がれたスタークラフト、GTに6回入着しているアワエジプシャンレインなどの人気のスター馬が出揃ったことと、香港からの遠征馬エレガントファッション、またドイツのパオリーニなどの外国勢も出走して話題に花を添えた。

結果は、冒頭で述べたようにこの日のために体重を48.5kgまで落としたクリス・マンス騎を鞍上に3歳馬のサヴァビールが優勝した。調教師は、調教師としてよりも腕利きのブラッドストックエージェント・ビジネスマンとして知られているNZ出身のグラーム・ロジャーソン調教師。ロジャーソン調教師は、自分で生産もする他に、TVのCMなどを通じて数多くの馬をシンジケートしている。今回のサヴァビールも、ロジャーソン調教師自身と他に3人のオーナーがいるが、うち1人は香港在住のオーナー。ロジャーソン調教師の長いスピーチは有名で、前にゴールデンスリッパー・ステイクス優勝式では10分を超える長いスピーチで聴衆を驚かせた。今回もコックスプレートの優勝スピーチの中でオーナーの1人ブルース・リード氏に触れて「ブルースは81歳の時に初めてうちの厩舎で1頭目の馬を持ちました。彼は今84歳ですが、既に88頭目の馬の株を持っています。彼にはぜひ100歳になるまでどんどん馬を持って欲しいと思います」と語った。もっとも今回の優勝で、またロジャーソン厩舎への入厩馬が増えるに違いない。

さて、サヴァビールは、オーストラリアのGTとNZのGTオークスを勝った母サヴァナサクセス(父サクセスエクスプレス)と父ザビールの間に生まれたオーストラリアの超良血馬である。クインズランド州にあるグレンローガン牧場とロジャーソン調教師のジョインベンチャーとしてサヴァビールを生産した。その後、マジックミリオンズ社のオーナーでバラムルスタッドのオーナーでもあるジェリー・ハーヴィー氏が買い取り、そのハーヴィー氏が1昨年のマジックミリオンズのセリに上場して、もともとの生産者で所有者でもあるロジャーソン調教師が落札したという複雑な話になっている。だから、先のスピーチの中でも、ロジャーソン調教師は、ハーヴィー氏に「買ってくれて売ってくれてありがとう」とユーモラスなお礼をしていた。

今年のコックスプレートはエルビスだという声が高かった。エルビスとはエルヴストロームのことである。コーフィールドカップでの勝ち方が素晴らしかったので、2000mでも問題はないだろうと誰でも思っていた。もっとも距離で負けたというよりも、レース開始直前にゲートで暴れて、「そこで競馬は終わってしまったと思った。それでも何とか抜け出して8着になったのはエルヴストロームの能力と根性だと思う」と騎乗したロイラー騎手は語った。レース前、大きな期待を呼んだスタークラフトもエルヴストロームに次ぐ人気だった。レースで、サヴァビールは、NZからの遠征馬ミスポテンシャルとリーガルローラーの2頭とともに前方集団に。そして2頭が落ちて行く間に逃げて逃げ切った。逃げはクリス・マンス騎手の十八番である。このレースで驚いたことは、昨年の優勝馬フィールズオブオマーがいきなり後方から追いかけてきて2着に入ったことであった。フィールズオブオマーは、昨年ジャパンカップと香港で惨敗した後休養に入り、今年8月にレースを始めたが5着と4着。10月2日にアデレードの準重賞レースで優勝したものの、ほとんどの人たちはフィールズオブオマーの復活を信じていなかった。だから、彼が、逃げるサヴァビールに追いついてきたときには誰もがその目を疑ったものだ。フィールズオブオマーは、言わば重馬場のムーニーバレー競馬場フリーク。昨年も実力ではなく、今年もまた実力で2着になったのではないというのが大方の見方。3着に入ったスタークラフトは、実力馬ではあるがどうやらチャンピオンには程遠いかも知れない。しかし、4着になったグランドアーミーをダミアン・オリバー騎手は「大きな競馬場だったら勝てた」と言っているが、実際、10月30日フレミントン競馬場でのGTマッキノンステイクスで5馬身を離しての圧倒的な優勝でそれを証明した。グランドアーミーは、ジャパンカップを迂回して香港を狙うという話がある。

コックスプレート優勝馬のサヴァビールは、元々VRCオークスを狙っていた。サヴァビール自身は2000m以上を走ったことがなかったが、父のザビールの血統からも、オークス馬の母親の血統からもVRCダービーの2500mを走れない理由はなかったからだ。この日サヴァビールは大本命になったが、しかし、結果は西オーストラリアからの遠征馬プラスターが勝った。プラスターは、第2のノーザリーになるのではないかと今注目のステイヤーである。西オーストラリアの馬がビクトリアダービーを勝つのは歴史上初めて。後方に辛抱強く待って、ゴール前300mで動き出し、逃げていたサヴァビールを11/41馬身離しての圧勝だった。レース前には、サヴァビールが、1984年のレッドアンカー以来のコックスプレート・ダービーのダブル優勝をするのではないかと期待されていたが、「彼より2500mが得意な馬に負けました」とレース後のロジャーソン調教師は控えめ。ちなみにこのプラスターは、鞍上のポール・ハーヴィー騎手の奥さんがトレーニングセールに出された馬を買って、何人かの人と共同で持っている馬だという。オーストラリアでは騎手の奥さんも馬を持つことができるが、優勝のプレゼンテーションに、オーナーとしての奥さんと騎手の夫が出るというのは大変稀なことだった。

ところで、サヴァビールは牡馬で、そろそろ年を取ってきたザビールの後継馬として、NZのケンブリッジスタッドが種牡馬に欲しいと早速名乗りを上げたそうだが、ビジネスに長けたロジャーソン調教師が2千万オーストラリアドルでも安すぎると言っているので、このまま活躍を続けていけば、引退後は、NZではなく恐らく国際的な牧場に行くのだろうと予想されている。