「優駿」オセアニア情報





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Mariko Hyland & Associates Pty.Ltd.



優駿 2003年1月号




第40回メルボルンカップ
亡き兄に捧げる勝利−ダミアン・オリヴァ−騎手

メルボルンカップは、オーストラリアの国民的な行事。大げさに言えばオーストラリアの成人の半分はメルボルンカップの馬券を買うと言われるほど。そのメルボルンカップには今年7頭もの外国馬が参戦した上に、オセアニア馬に注目に値するほどのステイング馬が出なかったために、もしかして優勝はもとより3着まで外国馬に独占されるのではないかとの予測がされていた。実際、ふたを開けてみると1着と3着が外国馬。かろうじて2着だけがオセアニア馬になった。長い間短距離血統に執着して、レースの番組も短距離にあわせたものを確立してしまったオーストラリア競馬のジレンマが、この2マイルレースに現れているようでもあった。
今年外国から参戦した馬たちの筆頭はヴィニーロウ。10年前に外国馬として初めてメルボルンカップに優勝したヴィンテージクロップの管理をしたアイルランドのダーモット・ウエルド超教師が連れてきた。アイルランドのセントレジャーを2年連続優勝しているスーパーステイヤーである。ウエルド調教師は、今年何ともう1頭連れてやってきた。メディアパズル。シアトリカル産駒で6歳のせん馬。ヴィニーロウが重馬場用の馬だとすれば、メディアパズルは、ウエルド調教師が固い馬場用に連れてきたのだという。実際今年のオーストラリアは旱魃がひどく、いつもは大雨になることもあるメルボルンがカラカラに乾いてカップ当日もその天気は変わらなかった。最初、マスコミは、ヴィニーロウのみをマークしていたが、メディアパズルが10月23日のステップアップレース、ジョロンカップで力強い勝ち方をして一躍注目を集め始めた。騎手は地元のダミアン・オリバー騎手。
その他の外国馬も決して侮れなかった。ゴドルフィンはビーキーパー、ハタアナそしてパグンと3頭も送り込んだ。中でも、10月19日のGTコーフィールドカップで6着になったビーキーパーが、結構健闘しそうだと、人気が出ていた。この馬には、メルボルンカップの元優勝騎手、ケリン・マカボイ騎手が騎乗することになっていた。英国からはマイケル・キネーン騎手とダリアプールをサー・マイケル・スタウト調教師が、アラン・ジャービス調教師は、ジャルディーンズルックアウトを連れてきたほか、香港からデビッド・へイズ調教師が元NZのチャンピオン馬へレーネバイタリティを連れてやってきていて、メルボルンカップは総勢7頭の外国馬が参戦した。ところでNZからの馬をオーストラリア人は外国勢とは言わない。ステイヤーのいない(育たない)オーストラリアでは、メルボルンカップのような長い距離のレースにNZ馬がいないと、競馬が成り立たないからだ。NZ競馬もまたオーストラリアにやってきて競馬をしないと存在していけないから、このようなオーストラリア人の態度にしのごのいう人もあまりいない。そしてそのNZから、今年は5頭がメルボルンカップに参戦した。
こうして、今年のメルボルンカップは、よりいっそう国際的になっての開催だったが、カップ一週間前に落馬事故のため、騎手だったお兄さんを亡くしたダミアン・オリバー騎手が、メルボルンカップで、そのお兄さんの弔い合戦ができるかどうかが、ほぼ国民全体の関心事になっていた。TVも新聞も全国ニュースでオリバー騎手を追っていた。オリバー騎手は、幼い時に同じく騎手だったお父さんを亡くしている。このようなことに人一倍同情心が強いオーストラリア人は、祈るような気持ちでメルボルンカップを迎えていたと言えるて。当日、オリバー騎手の乗ったメディアパズルは本命となった。
結果は予想通り、あるいはオーストラリア人のほとんどが願ったように、ダミアン・オリバー騎手の騎乗したメディアパズルが優勝した。2着を2馬身離しての堂々の優勝だった。2着は、84歳で今だ現役、オーストラリアの誇るジョージ・ハンロン調教師のミスタープルーデント。8歳のせん馬で昨年のシドニーカップの覇者。しかし暫く泣かず飛ばずで、今回、複勝が11倍もついた。そして3着は、ゴドルフィン厩舎のビーキーパー。1着3着と外国馬に活躍されたものの、地元の騎手を乗せての入着で、オーストラリアの国民的行事は何とか誇りを保つことができたようだ。もっとも、この外国馬の2頭は、メルボルンカップ前にオーストラリアで1回づつ走り準備万端、しかも、トラックに慣れている地元オーストラリア人騎手を起用したことが成功したのではないかと言われている。来年日本の馬がもしメルボルンカップに参戦を予定しているとすればこれはとても役に立つアイデアかも知れない。
メルボルンカップを中心にしたビクトリア・レーシング・クラブ(VRC)のメルボルンカップカーニバルは大成功に終わった。ダービーデーからカップの後のエミレーツステイクスデーまで4日間で何と40万人近い観客を集めたのだ。この日私は日本と韓国からのゲストを接待していたが、彼らの感想は須らく"競馬が単なるギャンブルではなく、文化であり、スポーツであり、娯楽であることをつくづく感じた"というものであった。オーストラリアが世界に誇れるものは、この競馬文化かも知れない。